アワード2023
新着情報
審査結果
応募総数367作品の中から、
下記の通り受賞作品が決定いたしました。
応募総点数 : 367点
ファイナリスト作品 : 16点
受賞作品
大賞
100万円
『 Translucent 』
小泉 裕聖
受賞者コメント
普段は建築の設計をしています。今回、木質空間で使う半透明な壁紙を提案しました。下地補修で使われる寒冷紗に色をプリントすることで、できる限り広く使われるような壁紙にしたいという思いで作りました。将来的には実用的なものになっていけばいいなと考えています。この賞をいただけたことが信じられません。このようなアワードを企画していただきありがとうございます。今後も参加したいと思います。
審査員コメント
- 植原 亮輔
- 実際の空間を想像すると、すごくきれいだろうなと思う。近づいて見て「寒冷紗!?」という驚きやギャップがあるのが良い。
- 岡安 泉
- 寒冷紗で仕上げたものを見たことはあるが、こんなに美しくなるとは。色は混ぜると黒になり、光は混ぜると白になる。この作品は重ねても重ねても暗くならず、光のようだと感じた。
- 山﨑 健太郎
- 普遍性のあるアイデアで、建築に関わる人にとっては当たり前の素材を、意匠として成立させたところが鮮やか。強いアイデアにデザイン性を加え、ある種の美しさを持たせたところが評価につながった。
- 座間 望
- 作品を評価するときに、アイデアやセンスなど、いろいろな見方がある中で、この作品は完成度がいちばん高かった。発想や、木目を生かすための素材選び、淡い色彩など。好きだな、と思えた。
- 安田 正介
- コンセプトとデザインが一緒になって初めてすばらしいものができる。この作品はどちらも見事。
優秀賞
50万円
『 Thunder 』
田淵 萬坊
受賞者コメント
ホログラムの壁紙です。稲妻が暗闇に閃光する一瞬を参考に画面構成しました。視線が動けばパターン内の虹色は変化して動きます。艶消しの黒とホロとの対照がよく出て、落着きがあって色気のある色合いに仕上がりました。サブタイトルは“淑女の輝き”。優秀賞をいただけて、こんなうれしいことはありません。まだ、この上の賞があるので、来年もがんばります。
審査員コメント
- 植原 亮輔
- コンセプトが単純明快でおもしろい。表現の抜けの良さがすごい。何よりも、稲妻の形が良い!リアルと漫画的な表現との中間くらいか。艶とマットのコントラストのつけ方がすごく上手で、平面なのに奥行きを感じる。
- 岡安 泉
- このアワードの中に、純粋なグラフィックデザインで勝負する作品があって良かった。今年はそういった作品は少なめだったが、この作品は、少数派の中でとんでもない力と存在感を持っている。
- 山﨑 健太郎
- 応募作品の幅が広がったことで、萬坊さんのパーソナルな能力が際立った。アイデアやコンセプトがおもしろい作品が多数ある中で、その対極に位置するのが、萬坊さんの強いデザイン。
- 座間 望
- 萬坊さんの才能が炸裂したな、というところ。こういうデザインは勇気がいる。思い切り良く作られた、センスのいいデザイン。
- 安田 正介
- 大判で見ると、より際立つものがある。完成度が高い。
審査員賞
15万円
サンゲツ社員賞
5万円
- ※最終選考に残ったファイナリスト作品からサンゲツ社員がそれぞれの視点で魅力を感じた作品を
投票で選ぶ賞『サンゲツ社員賞』を1作品設けています。
『 紙のタイル クラフティ 』
田淵 萬坊
受賞者コメント
新聞紙・雑誌等の古紙による、サスティナブルな紙のレリーフタイルです。環境問題が叫ばれる中で、動力を使わずに、手でものを作ることのすばらしさを表現したかったのと、ポリ塩化ビニル離れをしたものを作ることに意義があると思い作成しました。
審査員コメント
- 植原 亮輔
- 素材感がおもしろい。素材を破ることで端のテクスチャが味わい深いものに。パズルのように組み合わせることで表情が変わり、組み合わせが無限にできる。他にもいろいろなカッティング方法があるから、この仕組みに可能性を感じる。
審査員賞
15万円
『 空気の足跡 』
奥田 樹・前波 可菜子
受賞者コメント
豊かな自然環境の存在や人の気配を再認識できるような壁面ができないかと考えました。下地、色層、仕上げ層の三層からなる壁面で、仕上げ層にグリッド状のけがきを入れることで、熱と水分に反応し収縮・膨張を繰り返す仕組みです。変化を表現するデザインというのは実現が難しいのですが、もし製品化されればうれしいです。
審査員コメント
- 岡安 泉
- 格子ではないもので、いろいろなことに応用できると思う。研究を続けてほしい。こういったアイデアが、10年、20年先の開発の種となればいいなと。すごい未来を見たような気持ちになる作品。
審査員賞
15万円
『 Ocean Plastic -思い入れワークショップ- 』
光井 亮二
受賞者コメント
環境問題になっている海洋プラスチックごみを、壁面のデザインへと変換するワークショップを実施しました。参加者で海洋プラスチックごみを回収し、モノづくりの喜びを分かち合いながら壁面デザインをつくり、完成したものは地域交流の空間などの壁面に用いるという提案です。受賞を励みに、これからもがんばっていきたいと思います。
審査員コメント
- 山﨑 健太郎
- 海洋プラスチックだから、たとえば古民家に命を吹き込むための壁に使うなど、他にいいアイデアがあったのでは。一方で、ワークショップを実践的にやっているのを強く感じて、すごく良かった。そこを評価したいと思った。
審査員賞
15万円
『 イエティ(Yeti) 』
にしまた ひろし
受賞者コメント
日常の中のほんの短い時間、違和感を感じさせるような空間を作りたいと取り組みました。ストライプ柄の布をドレープさせて撮影し、図案化。優しい湾曲により壁面は程よく揺らいだ空間に変わります。通路などの空間にふさわしいテキスタイルデザインだと思っています。これからも生活を彩るような物づくりをしていきたいと思います。
審査員コメント
- 座間 望
- 人と壁との関係性が良い。そこに至るまでの経緯や思いなどを評価しつつ、デザインとしてもすばらしい。
ファイナリスト賞
各2万円
『 Va Va Voom! 』
芦田 さちこ・中村 卓
- 審査員コメント
- 色のバリエーションがあってもよかった。色の入れ方でデザインが変わるので、可能性を感じる。(植原)
審査員総評
植原 亮輔
株式会社キギ代表/クリエイティブディレクター・アートディレクター
今回は、全体的なレベルがさらに上がった気がしています。テーマが「壁面のデザイン」に変わったことで、例えばデジタルを使った作品や、プロジェクションマッピングを取り入れたような作品があってもいいのではないかと期待していましたが、そこまでの発展はありませんでした。
ただ、パーテーションや壁を使ったプロダクトなどの方向に発展していったのは、とても良かったと思います。また、作品にアクションを加えることで成立させたり、時間の経過で変化していく作品が出てきたのは、すごく進歩を感じました。「壁」というテーマ自体に制約はなく、可能性に満ちた領域です。さまざまな発想を具現化して取り組んでいただければと思います。これからのサンゲツデザインアワードが、ますます楽しみです。
岡安 泉
株式会社岡安泉照明設計事務所代表/照明デザイナー
「壁面のデザイン」という、広く解釈できるテーマに対し、将来的な可能性を感じました。応募作品の幅が広く多様で、これまで私が関わってきた中で、全体的なクオリティがいちばん高かったと感じています。「壁」の存在と、そのありようについては、クリエイターはみんな悩んでいたはずです。そこへ、サンゲツが壁紙から離れて、悩み深い領域に踏み込んできた、と私は捉えています。ただ、純粋にグラフィックのエネルギーで勝負するような作品は減りました。田淵さんの「Thunder」が優秀賞に入って安心しています。将来的には、このアワードが、商品化できるような面白いアイデアを、サンゲツがうまくピックアップして研究開発や商品化につなげていくための場になるべきだと思います。そうすると、応募者にもサンゲツ側にもメリットがあり、この先、サンゲツデザインアワードを継続していく力にもなると思います。
山﨑 健太郎
株式会社山﨑健太郎デザインワークショップ代表取締役/建築家
今回の応募作品は非常に幅が広く、デザインとして優れた作品と、アイデアとして優れた作品との間で審議が展開されました。そういう作品たちが出るべくして出てきたのが、今回のアワードの特徴だったと思います。私としては、制作のプロセスや共感を生み出す考え方などに評価の過程で触れることができて、より理解が深まりました。その上で、アウトプットであるデザインを評価しました。最終的には「デザインとは何か」という議論に至り、今回に限ったことではありませんが、審査員の方々の専門分野やパーソナリティー、想いの強さみたいなものが表出して、それがこのアワードにとってすごく良かったと思います。
印象に残ったのは、洗練をどんどん重ねていく時代は終わりつつあるなと感じたことです。人と共創するとか、完成形を他者に委ねるような、“共感のデザイン”が出てきています。共感性は、デザイン業界共通の課題みたいなもので、今後もテーマになっていくと思います。
座間 望
ZA DESIGN Inc.主宰/インテリアデザイナー
私は今年で2回目の参加になりますが、素晴らしい作品ばかりでした。このサンゲツデザインアワードが、アーティストの登竜門的なアワードになっていく、その第1回目といった感じで、応募作品のバリエーションが幅広く、審査がとても楽しかったです。特に、身近な生活の中からヒントを得て、あったらいいな、と思うようなアイデアがデザイン化されている作品に共感しました。私たちは、時代に沿ったもの、もしくは未来に残せるものを、仕事として常に考えています。その観点だと、やはり何点か時代を見据えた作品がありました。時間の経過とともに変化するデザインや、未来の時間まで想定した作品などがありました。「壁面のデザイン」は、自由度が高く発想も自由。ゼロ地点から考えることができたと思います。審査する側は難しいものがありましたが、今後の可能性を強く感じられて、来年はどんな作品が出てくるかなと、今からすごく楽しみです。
安田 正介
株式会社サンゲツ 代表取締役 社長執行役員(2023年度時点)
※審査委員長
第7回目を迎えた「サンゲツデザインアワード」は、壁紙という枠や、商品化への観点を外し、「壁の在り方」に対してのクリエイティビティを提案していただきました。その結果、従来とは一気に趣が変わり、応募作品の中には、かなりユニークなものがありました。提案は新しいがデザインとして完成度がもうひとつといった作品や、想定通りに完成するか不明なものがあったのも確かです。それでも、コンセプトとして新しい提案があることを重視し、将来的な可能性を鑑みて評価しました。今回は「壁紙」から「壁」へと枠を広げましたが、今後は、さらに広く、デザインの可能性へと踏み込んでいければと思っています。そして、その実現が可能な会社にしていきたいと考えます。このアワードが、大きな意味での“デザインの力”で、新たにご応募いただける場として発展し、それが、ひいてはサンゲツの力となり、社会に大きな価値を提供できるようになっていってほしいと強く思います。
イベントレポート
2024.3.12
最終審査会&セレモニーを執り行いました。
審査会&セレモニー ダイジェストムービー
最終審査会&セレモニー レポート
7回目を迎えた今年、「サンゲツ壁紙デザインアワード」は「サンゲツデザインアワード」に生まれ変わり、募集条件も刷新。“壁紙のデザイン”に留まることなく、“壁面のデザイン”を募集しました。その結果、壁面のある空間や、壁面と暮らしとの関係性をひもとくようなコンセプトやアイデアを創出する、新しいコンペティションとなりました。
2024年3月12日、サンゲツグループの新たな価値創造拠点である、東京日比谷「PARCs(パークス)」にて、最終審査会およびセレモニーが開催されました。16組18名のファイナリストが真新しいオフィスのホールに集い、ほどよい緊張感のなかプレゼンテーションがスタート。活発な質疑応答が交わされ、ファイナリスト作品に込められた想いや魅力が鮮明に浮かび上がりました。
前年同様の顔ぶれとなった審査員の皆さんは、それぞれが活躍されている専門分野特有の視点や感性で作品と向き合い、意見交換を重ねました。審議に際しては、アイデア、コンセプト、製作(施工)プロセス、デザイン性、素材、使用空間など、あらゆる角度から検討。各作品の根幹に触れる深い解釈と、将来への可能性をも視野に入れた議論により、大賞をはじめとする各賞にふさわしい作品が選出されました。
今回、募集対象を“壁面デザイン”に拡大したことで、壁面空間のあり方への提案などが発案される一方で、グラフィックデザインによる作品も、圧倒的な存在感を見せて受賞。審査員からは「このアワードが大きく発展する前の、助走段階なのかもしれない」といった言葉も出ました。多様性に富んだ作品群により「サンゲツデザインアワード」のさらなる可能性を示唆する回となりました。
セレモニー後のパーティーでは、受賞者及びファイナリストの方が、審査員やメディアの方々と盛んな談議をする様子が見られました。
当アワードが、未来のデザインの潮流を育む場になることを、サンゲツとしても強く期待します。2024年のアワードも、多くの皆さんからの応募をお待ちしています。