アワード2021
新着情報
審査結果
応募総数446作品の中から、
下記の通り受賞作品が決定いたしました。
応募総点数 : 446点
ファイナリスト作品 : 11点(受賞作品を含む)
- ※ファイナリスト作品とは、一次審査を通過し最終審査に残った作品を指します。
受賞作品
大賞
100万円
『 . to noise 』
原 寛貴 / 駒澤 直登
受賞者コメント
わずかな違和感がアクセントとなることを意図しました。ボロノイ曲線でベースとなる秩序をつくり、人に訴えかける力を持つノイズを、実際の壁紙への行為をモチーフとして生じさせています。人の行動を変えられる壁紙になればと思っています。
原:建築の設計の仕事をしていますが、今回壁紙をデザインすることで、改めて人の手で触れられるものの大切さを感じることができました。
駒澤:壁紙というものにどんな力があるのだろうと考えて、デザインに臨みました。この経験を普段の建築の仕事にも生かしていければと思います。
審査員コメント
- 谷山 直義
- デザインのプロセスを聞いて衝撃があった。アナログ的な発想とデジタルでの落とし込み、そのロジックを評価したい。
- 植原 亮輔
- これからのつくり方の可能性を投じている。自分にはとても考えられないような方法で憧れすら感じる。
- 安東 陽子
- 単なるデザインだけでなくパターン制作方法の斬新な提案を見て、作者の壁紙に向き合うオリジナルな姿勢を感じた。このアワードの未来を見せてくれたと言ってもいい。
- 岡安 泉
- 領域を横断してデザインするときのベースにできる考え方があるので、どの様なかたちの壁面にでも違和感なく対応していける可能性を感じた。
優秀賞
50万円
『 クリクリおめめ 』
ジャロンキットカジョン ポッサナン
受賞者コメント
壁紙としてだけでなく、子どものためのキャンバスと考え、その想像力をデザインに取り入れました。無数のドットの中に目玉のイラストのドットがあるので、それを生き物に例えたりして描き足してほしいです。この壁紙が家族の思い出や記念になったらいいなと思っています。
審査員コメント
- 谷山 直義
- 幼少期のプリミティブな体験がベースで共感を生む。世界中にある文房具の丸いシールを使うことでボーダレスでもある。
- 植原 亮輔
- 子どものための壁紙のようで、決して子どもに媚びたようになっていない。デザインとして整理されている。
- 安東 陽子
- ユーザーにデザインへの参加を促すような楽しい夢のある作品。商品化の際には壁紙とセットでシールやペンを用意しておいても良いくらいでは。
- 岡安 泉
- 壁紙とユーザーの関係性が変えられる。それを使う側に任せて、思うままにできるという自由さがある。
審査員賞(谷山賞)
20万円
『 TWIST 白黒ver. 』
本園 師芳
受賞者コメント
手描きのドローイングによる身体性が、無機質な空間において心地良いノイズとなるのではと考えました。オートマティズム的な手法と作為的な描画でバランスを取りながら、壁紙としての居心地の良さも生み出しています。
審査員コメント
- 谷山 直義
- 荒削りでありながらも、人の手の密度のようなものを感じる。完全ではない部分がもたらす、緊張感がプラスに影響を与えている。
審査員賞(植原賞)
20万円
『 up to you 』
畑澤 真由美
受賞者コメント
機能や役割を限定せず、壁だけでなく、横使いや天井、パネルアート的にも使えるようにデザインしました。揺らいだ線によるミニマルな構成は和洋を問わず、どんな空間でも合うようなものを目指しています。
審査員コメント
- 植原 亮輔
- 線が太くなる方向がグラフィックのセオリーとは逆にもかかわらず、奥行きを感じられる。そこをとてもコンセプチュアルに思う。
審査員賞(安東賞)
20万円
『 ochikami 』
小野 竜哉
受賞者コメント
誰でもできることからの偶発性と素材の特性をそのまま生かすことをコンセプトにしました。折り紙を自然に落とした映像を元にして、日本の伝統色とアンリ・マティスの作品の色をモチーフとしました。使った人が明るい気持ちになってもらえればと思います。
審査員コメント
- 安東 陽子
- 紙が落ちる様子を撮影した画像を基にした、生命感のあるシンプルな美しい作品。余白と影のバランスが秀逸で、壁紙の奥にさらに広がる空間が感じられる。
審査員賞(岡安賞)
20万円
『 SETOUCHI 』
中崎 佑香
受賞者コメント
瀬戸内の海際の風景写真を曖昧な線模様で切り抜くことで、近くと遠くで見たときに異なる印象を生み出しています。グラデーションや線の重なりが、山、海、空という遠景や静けさを想起させる効果を意図しました。
審査員コメント
- 岡安 泉
- 斜めの格子から生まれる丸が、温かさやかわいらしさを感じさせる。設計的な手法と、風景や情緒的なイメージがうまく噛み合っている。
最終選考に残ったファイナリスト作品から
サンゲツ社員が商品化したいと思う作品を投票で選ぶ
特別賞『サンゲツ社員賞』を1作品設けています。
サンゲツ社員賞
5万円
『 ヒュッゲ(HYGGE) 』
山田 佳貴
受賞者コメント
ゆとりのある居心地良い空間を意図して、デンマーク語から名前を取りました。人のつながりや会話のように輪が重なり合い、空間に広がっていくイメージです。日本の伝統色である3つの藍色を用い、輪が交わった輝きを金箔で表現しています。
ファイナリスト作品
(受賞作品以外)
ファイナリスト作品とは、最終審査に残った作品を指します。
審査員総評
谷山 直義
株式会社 NAO Taniyama & Associates代表取締役社長/クリエイティブディレクター
壁紙の考え方、大きく言うとデザインそのものが大きく変化していく瞬間に立ち会っているという自覚があります。デジタルテクノロジーやパンデミックなど我々の暮らし方が変わることで、デザインのアプローチそのものが根本的に影響を受けている。それは不可逆的で以前には戻らないのだと、応募作品を審査しながら、考えさせられました。
世界中で情報が共有されるなかで、表面的な美しさやテクニックではなく、本質的にコンセプトが際立っていることが求められているのかなと。今回の受賞作も多くはそういう観点で評価されていますね。
植原 亮輔
株式会社キギ代表/クリエイティブディレクター・アートディレクター
全体的にレベルが上がっていると感じました。1次審査の時点では突出したものがない印象だったのですが、ビデオプレゼンを経て、評価が大きく変わりました。プレゼンや質疑応答があることで、自分とは違う視点や気付きを与えてくれます。結果、作品に深みが増すことになる。ファイナリストにはそういうポテンシャルのある作品が揃っていたのでしょう。大賞と優秀賞は非常に対照的で、そのギャップがとても面白い。大賞はコンピュータプログラムで自然現象的にデザインを発生させて、デザイナーの意識をある意味、上書きしている。
壁紙のデザインは作家の個性が強すぎると圧倒されてしまうので、意識と無意識の間に、人が引き込まれる魅力を求められるのかもしれません。
安東 陽子
株式会社安東陽子デザイン代表/テキスタイルデザイナー・コーディネーター
審査をさせていただいた3年間で、コンセプトの比重が徐々に増えてきたと感じています。サンゲツさんはこのアワードを単なるイベントとしてではなく壁紙のサプライヤーの当事者として現実的に捉えているからではないでしょうか。私たち審査員はデザイナーの視点で、どんな空間にその壁紙を使うのかを主に評価しますが、最終的に審査する過程で、プレゼンテーションも含めて多様性を持った、いろいろなアプローチの作品が出てきていると感じます。作者自身の内にあるものや興味がきちんと表現されていて、全体として深みが増したとも言えると思います。最終のプレゼンテーションではとくに多くの発見があるので、サンゲツ社員の方にもぜひ一緒に見ていただきたいですね。
岡安 泉
株式会社岡安泉照明設計事務所代表/照明デザイナー
初めて審査をさせていただき、とても意外に感じたのはその多様性です。表層の平面である壁紙に対し、グラフィックデザインだけではなく、アート的な手法だったり、工業製品のようなつくり込みや、アルゴリズムを持ち込もうという人もいる。平面の中に空間的、時間的な奥行きをつくり出そうとする様々な試みは、こちらの想像を大きく超えるもので、私自身も勉強させてもらえることが多かったです。普段の仕事では色と艶という点でしか壁紙はほぼ意識しないため、どこに評価軸を置くのかという部分は難しさもありました。作品の多彩なアプローチというものは、審査の難しさを高める一方で、楽しさも高めてくれたのは間違いありません。
安田 正介
株式会社サンゲツ 代表取締役 社長執行役員
※審査委員長
サンゲツ壁紙デザインアワードは今年で第5回目となりました。ファイナリストの皆さんにプレゼンテーションいただく審査方法は昨年からとなりますが、皆さまの説明を聞くと審査員側の見方もずいぶん変わり、トークセッションにて講評があった通り、今回の大賞作品の『 . to noise 』に関しては、デザイン手法そのものが高く評価されました。そのような観点での高い評価は初めてだったように思います。デザインアワードは、特に若い方、壁紙の世界に関与していない方に興味を持っていただきたい、そのような趣旨で始めております。その意味に置いては本年も良い結果であったと考えます。過去に大賞や優秀賞から商品化が実現したものもありますが、それらが市場の皆さまから評価いただけることは我々としても非常に嬉しいことだと思っています。今後ともアワードは継続していきたいと思いますので、たくさんの方に引き続きご応募いただけますと幸いです。
イベントレポート
2021.12.22
最終審査会&セレモニーが行われました。
審査会&セレモニー ダイジェストムービー
最終審査会&セレモニー レポート
2021 年12 月22 日に「第5回サンゲツ壁紙デザインアワード」の最終審査会およびセレモニーが、サンゲツの品川ショールームにて実施されました。
昨年に続き、新型コロナウイルスの感染防止に細心の注意を払いつつ、プログラムや出席者等を限定的にしながらの開催となりました。
審査員として新たに照明デザイナーの岡安泉さんを迎え、より多様な視点も踏まえながら、5 人の審査員で最終審査に臨みました。昨年から、ファイナリストによる当日のプレゼンテーションを最終審査のプロセスに取り入れたことで、より深く作品に切り込んだ、評価や選定になりました。
審査員として新たに照明デザイナーの岡安泉さんを迎え、より多様な視点も踏まえながら、5 人の審査員で最終審査に臨みました。昨年から、ファイナリストによる当日のプレゼンテーションを最終審査のプロセスに取り入れたことで、より深く作品に切り込んだ、評価や選定になりました。
感染対策上の配慮もあり、事前に提出してもらったプレゼンテーション動画を観ての質疑応答となります。審査員の皆さんの質問で多かったのは、実際の製作プロセスについてです。一次審査では作者の情報も伏せられた状態で、提出用ボードとコンセプト文だけで判断することになりますが、最終審査では製作意図やアイデアが更に明確となり、原寸大出力もあるため、当日評価が変わった作品も少なくありませんでした。コンセプト、プロセス、そして商品化を視野に入れた最終的なアウトプットのいずれもがしっかりと考えられ、説得力の高いことが、作品の強度や魅力につながっています。
大賞作品『. to noise』は今までのデザイン手法にはない斬新な発想と技術により、そのプロセスが特に高く評価され審査員の満場一致で選ばれました。壁紙デザインアワードの未来を示してくれるような、可能性を感じさせるプレゼンテーションでした。
大賞作品を始め、特にコンセプトの新しさや創造性は、壁紙のプロであるサンゲツ社員が舌を巻くようなものもあり、応募作品から刺激を受け、サンゲツも未来の壁紙をつくっていきたいという思いを強くしました。2022 年のアワードも、皆さんからのさまざまな作品をぜひお待ちしています。