アワード2020
新着情報
審査結果
応募総数420作品の中から、
下記の通り受賞作品が決定いたしました。
審査員の総意により、
昨年同様に「奨励賞」1作品を設けています。
応募総点数 : 420点
ファイナリスト作品 : 12点(受賞作品を含む)
- ※ファイナリスト作品とは、一次審査を通過し最終審査に残った作品を指します。
- ※審査員の総意により「入賞」を「谷山賞」「植原賞」「安東賞」の各審査員賞としました。
受賞作品
大賞
100万円
『 うつろい 』
高橋 賢治
コンセプト
人の動きにより色や光が移り変わる壁をデザインしました。エンボス加工の凹凸を4色で塗り分けることで、角度によって見えてくる色が変化し、人の動きに伴ってグラデーション状に多様な色味が現れます。カフェやラウンジスペースに用いれば、一つの空間に明るさや落ち着きといった異なる質感が同居する場所となり、その時の気分にあわせて居る場所を選ぶ楽しさが生まれます。固定されたグラフィックではなく、うつろいゆく壁面とすることで、人の動きに合わせて場所の雰囲気も変わるような空間演出を想定しています。
受賞コメント
壁紙自体は動かないものですが、人の視線や感情は常に変化していて、自分の中では、こんなものがあったら楽しいだろうなという思いを作品にしました。自然の風景の移ろいを壁紙で表現しています。受賞を大変嬉しく思います。
審査員コメント
- 谷山 直義
- 人の意識や動きを考えたデザインで、静止したものと捉えられていた壁紙の役割が広がると思う。言うなれば、ヤコブ・アガムを壁紙にしたものだが、現代の技術ならそれを建材化できる。非常にポテンシャルの高い作品だ。
- 植原 亮輔
- アイデアが圧倒的。始めから空間を意識していて、マクロからミクロへという視点でつくられている。色合いなどは日本的にも感じるし、世界でも通用するミニマルなデザイン。技術的な懸念も感じたが、実現可能だと聞いたので、ぜひ商品化してほしい。
- 安東 陽子
- アワードのコンセプトをとても良く理解していて、「あったら楽しくなる」というものを作品化できている。非常に作り込んだものだが、それが前に出すぎることなく客観性を保っている。そういう距離感も作者の人となりが現れていて、評価したい。
- 安田 正介
- 色とエンボスの凹凸を同調することにより、見る方角によって全く違う色調が表われる作品。当社はこの色の移り変わりを、現在のベストの技術および製造方法により商品化するべく挑戦したいと思います。
優秀賞
50万円
『 first rhythm 』
小野 竜哉
コンセプト
遠くから見ると細かいパターンの空間だが、壁紙の近くで見れば各々のパターンに個性があることがわかる、「気づきの空間」を目指した。規則的に並んでいるように見えるパターンだが、よく見ると一つ一つ違う形状が敷き詰められている。各々の形状は、実際に彫刻刀で木版を彫り、配置している。ステイホームが続く中、アナログでの作業や所作を大切にするようになってきた。一つの空間に居ることで、手作業の痕跡が見えるようなプリミティブな空間を目指した。
受賞コメント
線の集合に見えるものが、実は一つ一つ異なる形状を持っています。手彫りの木版をベースにして、懐かしさや温かさを感じさせるアナログ感を大事にしました。初めて参加させていただき、こういった賞を授かることにとても感謝しています。
審査員コメント
- 谷山 直義
- 不思議な作品だ。古いようで新しく感じる。若い世代ならではの感性で抜き出てきたものがある。多様な見え方をする奥行きを持っている。
- 植原 亮輔
- デザインとしてヌケの良さがある。パターンのネガポジの関係がいろいろな見え方を誘発している。ありそうでないデザインだなと感じた。
- 安東 陽子
- ベースを手彫りの版画で起こしたという、手作りの良さがうまく出ている。とはいえ、色の選び方など心地良いクールさもあって、好感が持てる。
審査員賞(谷山賞)
20万円
『 rain-feel 』
千葉 拓
受賞コメント
私は建築学科の学生で、畑違いで難しいのかなと思っていました。作品では、雨のガラス窓がそのときどきで空間を変えうる様子を、淡い光沢とマットホワイトの雨垂れで表現できればと考えました。今回を機にもっと頑張ってデザインをしたいです。
審査員コメント
- 谷山 直義
- 身近なところからの視点で、空間として壁紙を捉えている。ある種の二重性があり、壁紙という軸はぶらさずに、現象を表現したところはチャレンジだし、新しいあり方と思う。
審査員賞(植原賞)
20万円
『 karanuri 』
南澤 詩音 / 澤田 昂之介
(桑沢デザイン研究所)
受賞コメント
南澤:平坦な壁紙に層を感じさせながら、華美と重厚感を持たせました。私たちは学生と社会人なので、それぞれの見えない領域を埋め合うように、制作に励みました。
澤田:和の空間が持つ経年変化に着目し、津軽の唐塗にたどりつき、モチーフとしました。なるべく楽しい作品をつくろうと頑張ってきたのが、こういう結果に結びついて誇りに思います。
審査員コメント
- 植原 亮輔
- 特徴的なデザインで、センスの求められる難しさがある。漆というモチーフのせいか、奇抜さがありつつも、どこか日本的な親しみを感じる。豊かな表情で想像力を掻き立てる。
審査員賞(安東賞)
20万円
『 呼応する壁紙 』
大塩 峻由 / 濱村 太郎 /
田巻 翔平 / 松田 豪
(株式会社ラックランド)
受賞コメント
松田:光の変化や人の動きで変容する空間を壁紙で提案しました。透明・不透明の素材を何層も重ねています。4人は同じデザインの会社に勤めていて、一人ではできない発想や手法を試みるという経験は貴重でした。人によって異なる見え方や体験のできる作品に仕上がったと思います。
審査員コメント
- 安東 陽子
- 異素材をうまく組み合わせて、多彩で複雑な表情をつくっている。人、時間、そして壁紙が、空間に介入する関係性を意識して取り入れていて、アワードの趣旨にもふさわしい。
奨励賞
10万円
『 大百鬼夜行 』
中澤 正美
受賞コメント
さまざまなものを入れ込んだ構成と鮮やかな色遣い、モチーフの生き生きとした表情を重視しました。絵を描くためのPCソフトも全然使えない自分が、まさかこんな賞をいただけるとは思いませんでした。これを励みにいろんなことに挑戦したいです。
最終選考に残ったファイナリスト作品から
サンゲツ社員が商品化したいと思う作品を投票で選ぶ
特別賞『サンゲツ社員賞』を1作品設けています。
サンゲツ社員賞
5万円
『 AtoZ 』
松本 千明
受賞コメント
グラフィックデザイナーで書籍・雑誌など文字を扱う仕事をしています。より多くのマテリアルを扱える空間のデザインをしてみたくて、応募しました。文字の反復と距離による見え方の差をデザインに生かし、100以上のフォントの検証を経て、たどり着いた作品です。
ファイナリスト作品
(受賞作品以外)
ファイナリスト作品とは、最終審査に残った作品を指します。
『 EDGE 』
大木 陽平
『 CHERISH 』
Chen Yuen Yih
『 星たち 』
福留 愛 / 鶴田 航
『 SORA 』
小嶋 宏昌
『 たゆら 』
南澤 詩音 / 澤田 昂之介
(桑沢デザイン研究所)
審査員総評
谷山 直義
株式会社 NAO Taniyama & Associates代表取締役社長/クリエイティブディレクター
デザインという行為は常にそこにいる人のことをただひらすらに実直に考え続けることだと思っています。今回もそのような観点で審査に臨みました。応募された作品は、大きく分けて、コンセプトにフォーカスしたものと、現象に焦点をあてたものという二つの傾向が見られたのではないでしょうか。全体に応募作品のクオリティーが大変高く、私自身も審査を通してハッとさせられることが度々ありました。来年以降も、皆さんとともに実直に考え、より良い社会やコミュニケーションにつながるデザインが生まれたらと思います。
植原 亮輔
株式会社キギ代表/クリエイティブディレクター・アートディレクター
普段行なっているグラフィックの仕事では、コンセプトを前に出したり、ポイントを見せることを求められます。壁紙のデザインはそういうものではありません。よりデザインに対して素直に、ナチュラルに向き合おう。そういったことを踏まえて、2年目のアワードの審査をやらせていただきました。コロナ禍という特殊な状況で、地味なものが多いのかなと少し心配してましたが、今回はデザインとしての完成度が高く、上位に残ったものは甲乙付け難いレベルで、賞を選ぶのにとても悩みました。このアワードは年々盛り上がってきていますから、来年もぜひ多くの人にチャレンジをしてほしいですね。
安東 陽子
株式会社安東陽子デザイン代表/テキスタイルデザイナー・コーディネーター
昨年に続いて2回目の審査をさせていただきました。人がいる空間で壁紙がどう生かされるか、という視点でよく考えられてものが多く、壁紙を実際につくるサンゲツの方たちもおもしろいと感じてもらえるような、未来につながる作品が集まったように思います。全体に作品のレベルが上がっていると感じていて、素晴らしい発想やアイデアのものがたくさんあり、審査自体も楽しむことができました。これからも、多くのみなさんで壁紙や空間について、考えてもらえたらと思っています。
安田 正介
株式会社サンゲツ 代表取締役 社長執行役員
※審査委員長
「壁紙のデザインに関係されていない人からもデザインを募集したい、もっと壁紙に興味を持っていただきたい」そのような思いから2017年にこのアワードをスタートさせました。4回目となる今年はエントリー数が765点、うち作品応募が420点となりました。この420点で壁紙のデザインに対する興味が世の中に広がっていくのかと考えれば、十分な数字ではないかもしれません。ただ、回を重ねるにつれその提案、デザイン、コンセプトの質的な部分は大きく向上してきています。当初は思いつきのような作品もありましたが、今年は単に一面的なアイデアではなく、空間の中で壁紙がどうあるのかまで非常に考え込まれたデザインが多く、ファイナリストに残った作品のみならず、大変素晴らしい作品を多数応募いただきました。その意味に置いては、420という数字以上に、壁紙のデザインの新たな広がりを感じています。今後も、学生の方をはじめ、より若い世代の方も興味を持って頂けるように、応募者の裾野を広げ、アワードを継続していきたいと考えています。
イベントレポート
2020.12.9
最終審査会&セレモニーが行われました。
審査会&セレモニー ダイジェストムービー
最終審査会&セレモニー レポート
12月9日、サンゲツの品川ショールームにて、「第4回サンゲツ壁紙デザインアワード 」の最終審査会、そしてセレモニーを執り行いました。4回目となる今年は、新型コロナウイルスの感染防止対策上、出席いただいたファイナリストや審査員、報道関係者にはご不便を掛けるかたちになりましたが、新しい時代に向けた試みも数々取り入れました。
最も大きな変化は、ファイナリストによる当日のプレゼンテーションを経て、受賞者を決定するという審査のプロセスです。特に今回は、会場を密にしないこと、リモートでの参加者への配慮から、事前に提出したもらったプレゼン動画を観た上での質疑応答というスタイルを取り入れました。
動画はそれぞれ趣向が凝らされ、BGMを入れたインタビュー風から、制作過程を見せたもの、あるいは作者自身が第三者として作品を語る寸劇的なものまで、動画ならではの情報量を生かし、多様で見応えのあるものばかりでした。加えて、作品の原寸大出力を見ながらの質疑応答によって、コンセプトや意図がとてもよく伝わってきました。
審査員皆さんが口にするように、今回は応募作品のレベル向上が著しく、特に空間性を意識した提案では、目を見張るものがあり、継続によるアワードの前進を感じられます。
セレモニーはコロナ禍という特殊な状況で、会場の人数を制限したり、フォトセッションを縮小したりと、せっかくの晴れの場も制約の多いものとなってしまいました。次回はより多くの皆さんに、壁紙の新しい広がりをご覧いただけるようになればと思います。